母の介護をきっかけに、私たちが要介護者の為の服をやろうと思い立ってから、まず大きな壁となったのは素材をどうするかでした。
国産の高品質な生地を使いたいという考えはありましたが、具体的に候補があったわけでもなく、コネも情報もありませんでした。
とりあえず、国産の綿生地を産地から直接買い付けたい!と思い立ち、「国産 綿」で検索して調べていくと、真っ先に出てくるのが愛知県の蒲郡地方でした。
愛知県?
そう、縫製担当の妹の家は愛知県安城市。蒲郡まで車で1時間程度。
早速アポイントとって片っ端からまわってみようと、ネットで調べた三河木綿を扱っている工場に電話してみて、衝撃の一言。
「日本に流通している国産の綿はありません。あったら高級呉服より高くなっちゃいますよ」
愛知県三河地方は日本の綿織物発祥の地であり、江戸時代に日本一の産地として大きく栄えたことがわかりました。
しかし安価な輸入品におされ、現在、日本の綿花はほぼ100パーセントを輸入に頼っているとのこと。
そこで、私達としては
①綿花の品質を国内でチェックし、流通ルートが明確
②強制労働が疑われる地方の綿を使用してないことが証明できる
ということを最低条件とし、まずは1件目、創業50年を超える老舗、株式会社イチオリさんを訪ねました。
ニコニコと出迎えてくれたまだお若いご夫婦。
こちらは様々な生地を取り扱ってらっしゃいますが、通されたテーブルの上には既に美しい色合いの布地が置かれていました。
「これは弊社多重織りのガーゼの中でも最も軽いガーゼです。」
手に取って感動。シルクのような光沢と上品な色。それは今までのガーゼのイメージを覆す美しさと軽さでした。
「これいい!」「これにしよう!」
糸の生産地もはっきりしていて、条件もクリア。
私たちはなんと一件目の訪問、最初に用意された布地に一目ぼれし、一発で決めて帰ってきたのでした。 (験を担ぐ私達。因みにその日その場所は最高の方位だったのです!)
聞けば、この生地を使って地元の高校生たちが、がん治療の方たちに帽子を作って寄付しているそうで。
「これをいつか医療に使ってほしいと思っていました。」と、 私たちの事業を大変喜んでくれました。
「自分たちは作れないんですけど」
とさらっと言った意味を、その後思い知らされることとなるのですが…